
にーちゃんがいかつくなりました。服はもっとごてごてとさせる予定。
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上の二人の設定でラノベの第一章ぽいのを勢いで書いてみた。
内容はともかくせっかくなので晒しー。
以下続きで。
◇ 第一章 宙に浮かぶ靴 ◇
おれの名前はドワイト・ニュートン。
正確にはドワイト・ウインストン・ニュートン。
ウインストンてのは死んだおれのじいさんの名前で、なんでも街の名士だった爺さんの命日に俺が生まれたとかで、
そこになにか妙な因縁を感じたらしいおふくろの名案(産後の気の迷いとも言う)と、それに同調した頭の
おめでたい親戚一同の満場一致を経て、生後2時間のおれはうやうやしくも爺さんの名前を頂戴したってわけだ。
ありがたくって涙が出るね。
残念ながら爺さんの生前の偉業どころか顔すら覚えちゃいない俺としては
そんな経緯で拝領したミドルネームに何の感慨をいだくわけでもなく
(書類に名前を書くときなんかにはめんどくさいとすら思ってるくらいだ)、
ものごころついたときから他人に自己紹介をするときはドワイト・ニュートンの名前で通してる。
それなりに親しいやつからはデューイとお決まりの通称で呼ばれる方が多いがな。
いや、そんなことはどうでもいいんだ。
オーケー? オーケー。よしまだ冷静だなデューイ。
そう、冷静さは俺が持つ数少ない長所の一つだ。
いや実を言うとまったくもってそんなことはないんだが、ウインストンの名前をつけられてから今日までの
27年と数ヶ月間、まったくもって病気らしい病気もないまま必要以上に大きく育ったこの体と、
常に眉間に皺を寄せているように見えるいかめしいツラがまえ(悪かったな、地顔だ)、
そして極めつきは市民の安全を守る市街警護官という役職と、こういった要素が寄ってあつまれば、
ちょっとやそっとのことではビクともしない、冷静で頼もしく、ついでに言えば善良な市民が近寄りがたい
ごっついおまわりさんのできあがりってわけらしい。
個人的な心情はともかく、少なくとも周囲の人間はそう感じているらしいのは確かだ。
裏路地を徘徊するチンピラどもが勝手にビビっておとなしくなったりとそれなりに役に立つことも多いんで
ことさらに誤解を解く気もないがな。
ああいかん、また関係のない話になっている。
つまり外からどう見えていようが、いざ何か起これば頭の中はこんな具合ってわけさ。
造物主さまとやらもどうせなら頭の中身を体と同じくらいに頑丈にしてくれりゃ具合がよかったのにな。
よしオーケー、少しは頭がまともになってきたな。その調子だ。
確認しよう、お前は誰だ?
デューイ・ウインストン・ニュートン27歳。オーケー、それはもういい。
よしデューイ、今はいつだ?
グライスタ暦1888年赤竜の月の30日。明日はなけなしの給料日だ。これもオーケー。
じゃあデューイ、ここはどこだ?
グライス市街の外れにある高台だ。今日みたいに天気がよくて風の緩やかな日はここから街が一望できる。
ひそかなおれの休憩スポットであり、同時におれの警邏(けいら)管轄区だ。一応な。
そう、警邏だ。
詰所を出て中央通りを抜け、繁華街とスラムの入り組んだ細道を警棒片手に気持ち眉間に力を入れながら
(普段と全然変わらないとよく言われるが)歩いたあとに、リアネ通りの花屋でティモンとたわいない話を
ふたつみっつ交わしてから、はす向かいの果物屋で冷えたカシツバキとハッカの果汁を買って
えっちらおっちらこの高台までやってきては休憩がてらに一息つく。
今の詰所に転属になってからここ4年ほどの間、バカみたいに毎日繰り返してきた巡回コースだ。
この季節、今日みたいな天気のいい日の昼下がりの今ごろは高台に吹く風が最高に気持ちいい。
空気に青く霞んだはるか遠くの山脈を背に、街の中心にそびえ立つ中央塔を見下ろす風景は
無趣味なおれが楽しみにしている数少ない有意義な時間のひとつだ。
この仕事はそれなりに忙しくはあるが面白いし、自分の性に合っていると思う。
口やかましい上司がいるわけでも嫌味を言う同僚がいるわけでもない。仲間はみんなそれなりにいい奴だ。
だがこの仕事をしていれば、その性質上、どうしたって人のいやな部分に触れざるを得ない。
見知った相手が犯罪に手を染めたあげく、自分がそいつを捕まえるハメになるなんてこともある。
この街はさほど治安がいいというわけでもないので人死にだって日常茶飯事だ。
そんな仕事を続けていれば、日常の憂さにうんざりする日も正直言って少なくない。
休日なんてあってないような職務のなかで、
高台の柵に一人腰掛けて風に揺れる緩やかな葉擦れの音を聴きながら見下ろす街の風景は
どこぞの貴族が夕餉のあとに名画を眺めて遠い空想に想いを馳せるような優雅な時間にだって匹敵する。
側道を通る人間だってめったにいやしない。
目に映る風景の中で動くものは、緩やかに形を変える雲くらいだ。
高台での休憩はほんの十分程度の短い時間だが、ここにいる間は、めまぐるしく動く日常の中の時間とは
確実に違う時間が流れている。
ささやかだが、神聖な時間だ。
神聖な職務中にサボっているんだから神聖なんていうと罰があたるかもしれないが、
神さまもこれくらいはサービスしてくれるさ。
そう、今日もそうやっておれの、おれだけの時間をここで過ごしていたんだ。
はじめは普段となにも変わりはなかった。
枝葉の揺れる小さな音に混じるかすかな小鳥のさえずり。
腕の上を通り抜ける、草の匂いを含んだ少しだけ冷たく湿った風。
空から降り注ぐ優しく暖かな陽の光。
いつもと変わらない景色。いつもと変わらない空間。
雲がゆっくりと行き過ぎるだけの風景に自分の意識が溶けおちて、
自分もまた風景の一部になったような、そんな忘我にも似た感覚にまどろんでいた。
ふと雲の影が顔に落ちて、そこで我に返る。
誰に見せるでもない苦笑を浮かべ、そろそろ仕事に戻らねばと、立ち上がった。
自分はなぜ、この何気ない景色に惹かれるのだろう。
これまで何度か考えたことはあったが、答えはでなかった。答えがあるようなものでもないのだろう。
顔を上げ、名残惜しむようにもう一度だけ振り返る。
流れる雲、霞んだ山、静止した街並、宙に浮かぶ小さな靴──────
──────靴?
「やあっと見つけた。あなたがウインストン家の跡継ぎね」
頭の上からくすくすと声が響く。
切り立った崖に突き出した高台の、縁にささった柵のその向こう側。
その遥か先に見える町並みとの間の、何もない宙空に浮かぶ靴の上からその声は聞こえてくる。
「こんなに成長するまで発現しないなんて……
大魔法家ウインストンの家督を継ぐものがこれじゃ、先が思いやられるわね」
魔法? 家督? ウインストン? 何の話だ!?
ここまできてようやくおれは目の前に浮かぶ靴の上方に顔を上げた。
──そう、こいつだ。
こいつのおかげで、おれはこの日を境にこの大切な場所を失うことになったんだ。
そこには、魔女の姿をした年端のいかない少女がいた。
魔女。そう魔女だ。おとぎ話とか絵本にでてくるあの魔女だ。
途中から折れ曲がったけったいな三角帽子、つま先のとがったなめし革の靴、
細やかな刺繍の施された古めかしい厚手のドレス、そして少女の体には不釣合いな、ひどく節くれだった大きな杖。
それらを身に着けている中身がせいぜい10とそこら程度にしか見えないのはともかくとして、
少なくともおれには魔女にしか見えなかったね。
これでわたしは郵便屋だとか抜かしやがった日にはおれは今日からティモンの店で花束のひとつでも売ってやるさ。
呆然とアホ面を向けて固まっているおれの目の前で
あいも変わらず宙空を踏みしめて立っている紫色の瞳をした魔女の格好の少女は、
帽子の内側から垂れ落ちる腰までありそうな長い金髪をふわりとなびかせて
くすりと少し口元を動かしたかと思うと、ご丁寧にも空中に立ったまま細い指先でドレスの端を
くいとつまみあげ、深々とお辞儀をしてこう言った。
「自己紹介が遅れたわね。
わたしはエステナ・マリークワント。
あなたの許婚よ。
よろしくね、大魔法家の跡継ぎさん」
オーケー、わかったもういい。
こんな妙な格好をした妙な少女からここまで妙な話を聞かされて、
少しでも冷静になろうとしたおれがバカだった。
こいつが何者かとか、その奇妙な格好はなんなのかとか、そんな話は後回しでいい。
ただ、この時点でひとつだけ確かなことは。
このクソ生意気そうな金髪の小娘は、おれの神聖な時間と空間を引き裂いて
「空のむこう」からやってきたんだ。
────「第二章 ウインストン家の秘密」 に続く
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…とまぁだいぶ体の調子が戻ってきたんで「瓦礫~」に戻る前に
リハビリがてらざくざく描きこんでたら、いつのまにかラノベができてました(何
これなんてハルヒ? あるいは禁書目録? あるいはすももも? あるいはゼロ魔? あるいは(もういい
ゼロ魔よんだことないけど。
まじょこさん描いてたら、描きたい絵柄の方向性が少し定まった気がする。
なんという文字どおりケガの功名。
超いきあたりばったりで設定組みながら書いたんだけど、いがいとぽんぽんとラノベ展開が
でてきたもんでやりやすかった。
どんだけラノベ脳なんだよ。
ちなみにかわいそうな常識人のドワイトさんは
展開が先に進むにつれてだんだんロリコンスキルに目覚めていく予定です。
認めたくはないのにこんな小娘に惹かれていく自分がいる…! とかそんな自分の中の葛藤にじたばたする感じ。
うわーかわいそう(棒読み)
気が向いたらつづきを書くかもです。